HI-RESO INTERVIEW #4

森広隆「LIVE ON PLANET EARTH」セルフライナーノーツ
2014年にリリースした森広隆初のライブアルバム「LIVE ON PLANET EARTH」より、2015年2月より配信音源もスタート。本人によるセルフライナーノーツを掲載。

「Fuzz Master」
Fuzzは、エレキギターの音を歪ませるエフェクターです。 本に書いてあった回路図通りのパーツを秋葉原に行って買い集め、自作したFuzzで音を出しているうちにリフができ、それを発展させて作った曲です。Fuzzの意味を辞書で調べると、英語で綿毛、けばだたせる、ぼやかすなど。
"Fuzz Master"は歌詞をつける前の仮タイトルだったのですが、出来上がった歌詞と意外と遠くもない気がして、そのまま本タイトルにしました。

「退屈病」
トリッキーなリズムでリフを作るのが好きで、よりハードなサウンドでそれをやってみたらどうなるかなと、そんな興味から実験的に作った曲です。歌詞ありきで変拍子になった部分もあり、面白い仕上がりになったと思います。

こういった病は一度発病するとなかなか完治しないので、何かしらの創作活動をするなどして、うまく付き合っていくようにしましょう(笑)

「エレンディラ」
男女二人組みの詐欺師が主人公のロードムービーの様なストーリーを考えて遊んでいました。キャラクターの生い立ちや性格なんかもノートに書いてい るうちに、だんだんとリアリティが出てきたので、一場面を切り取って作ったのがこの曲。登場人物の女性は、ごくありふれた自分の名前がイヤで、ガルシア・マルケスの小説から取った"エレンディラ"を偽名に使っています。

後に、ここで出来上がった世界観を膨らませてコンセプチュアルなアルバムを作ろうと考えるようになり、セカンドアルバム「planetblue」へと繋がって行きました。

「密室」
22~23歳ごろ、ゼロ地点と同時期に作った曲です。ひどく混沌とした気分とイメージを、どうにか言葉、メロディー、コード、リズムなどで形にしたいという思いで、心のおもむくままに作った憶えがあります。
当時この曲に込めたかったものは、"ひとつの生命としてこの世界の中で生きてゆくこと"への自分なりの印象や解釈のようなものだったと思います。言葉でうまく説明しきれないことが、曲にする意味でもあり、原動力にもなっています。

「黒い実」
ゼロ地点でやった16ビートのクイを基本にする曲の作り方を、休符を演奏するような概念でより強調してみたらどうなるか、という遊びから始まった曲です。カセットMTRからオレンジ色のシェル型iBookとCubaseというソフトに乗り換えてデモを作りました。
デジタル環境の影響かどうかはわかりませんが、他のグルーヴィーな曲たちと比べるとブルース色が薄く、タイトかつメロディアスな雰囲気になっていて面白いですね。

「並立概念」
物心ついた頃から、この世界は本当に在るんだろうかという、悲観でも楽観でもない単純な疑問をぼんやりと抱いていたので、「生きている」というよりは「長い夢を見ている」に近い、そういう感覚をどうにか歌にしたくて作りました。
面白いコード進行を探す遊びが、この曲あたりから飽和してダイアトニックをはみ出しつつあります。

「雨は止まない」
まだ薄暗い雨の明け方に、ぽつぽつという雨の音とこのリズムが僕の中でリンクして出来た憶えがあります。
このライブ盤の中ではいちばん古い公演のテイクです。単純に気に入っているテイクだというのもありますが、あの頃と現在では発声に対する考え方みたいなものが違っているので、その変遷も残しておきたいと思い、このテイクを選びました。

「不思議な模様」
音源化されている曲の中で、いちばん古い曲です。4トラックのカセットMTRでデモを作りました。
幼児期のいちばん古い記憶は、鹿児島の笹貫という街に住んでいた頃で、大きな窓から空を眺めていると、泡のような、微生物のような不思議なものがゆっくり落ちてゆくのを、兄と一緒に目で追っていた場面です。
「考える」ということを始める以前の、自分と世界との関係に対する気持ちを歌にしています。 いま考えればあれは、ミジンコぴんぴん現象(by桜玉吉さん)だと思うのですが、いや、それにしては粒がすごく大きかったような。。。
愛聴していた「ミュージックフロムソーサリアン」というゲームのサントラの最後の曲「Ending 2」が3拍子で、その終わり方が好きだったので、僕もこの曲をアルバムの最後にしました。

「Pebama」
沖縄の最南端、波照間島にある、砂浜の名前。地図には「ぺー浜」と書いてありましたが、現地の人たちは「ペバマ」と呼んでいます。島の西側に位置するので、そこから夕陽を眺めることができます。
世界にはこんな神秘的な場所があったのかと息をのむほど、本当に美しい砂浜でした。そこでは僕はただ茫然としていて何も作れなかったのですが、東京に戻った最初のレコーディングの日、浜の景色を思い浮かべながらスタジオにあったピアノを弾いてるうちに、この曲ができました。

「悪魔の提言」
ジャズ的要素を入れたライブアレンジはベースの紺野光広さんの発案をみんなで膨らませたもの。西やん(Sax)とカテイくん(Vn)によるセクションが効いていて、とても気に入っています。後半に行くに従ってだんだんと原曲寄りにしました。
この編成でこのアレンジのこの曲は一度しか演奏してないので、録音が残っていて良かったです。

「Trash」
16ビートのグリッドの中でいろんなアクセントを組み合わせるリズム遊びから始まりました。これも休符を演奏するというような概念で作ったリフレインで、ある程度複雑なパターンでも、繰り返すことでよりグルーヴしていくのかなというチャレンジだったと思います。構成やメロディーの運びもだいぶ実験的になっています。
「Tra--sh」というコーラス部分は、安易に英語使うのもどうかなーと思って最初「ごーみー」と歌ってみたところ、全く意図しないコミカルさが出てしまうので、やっぱり英語にしちゃいました。

「ただ時が経っただけで」
意外かもしれませんが、詞先の曲です。元は歌詞というよりはただの詩で、そこからイメージしたベースのリフから曲が出来はじめ、リズムパターン、カッティングリフ、最後にメロディーという順番で作りました。カセット4trで作ったデモが個人的にすごく気に入ってた憶えがあります。
デビュー曲でもありますし、今でも自分の原点にある曲だと思っています。

「ゼロ地点」
サビ前の「ゼロ地点」という部分の歌詞とタイトルだけが決まらず、それ以外の全てが出来上がった状態で、「ここに何か、この感覚をひと言で表す言葉が入る」と考え続けてやっと完成したのを憶えています。
出来たはいいけど、Charさんの「SMOKY」に似すぎてると思いボツにしました。ずいぶん経ってから、何かに似ることを避けるのも不自然だと、似ててもこれが自分なんだなと開き直って、改めて自分の曲になりました。

「CYCLONE」
ファーストアルバムの時期は、上京したての頃に先輩から頂いたストラトキャスターを愛用していましたが、ライブ用のサブギターとして買ったサイクロンで最初に弾いたコードA△7からAメロが生まれて、そのまま完成した曲です。
鹿児島の小学生だった僕にとって、強風と豪雨で日常の退屈な風景を一変させるモンスターのような台風は、ワクワクの塊でした。 時々、学校を休みにもしてくれますし(笑)

「交差点」
これもかなり古い曲です。
他に比べてキャッチーな曲だったせいでいろんな都合に巻き込まれたところもあり、1stアルバムには収録しなかったのですが、そのままタイミングを逃がし逃がし、今回ようやく15年越しの音源化となりました。
当時、ひとりで店番をするようなアルバイトで生活していたのですが、、雨に濡れながらギリギリの時間にバイト先について、お客さんも誰も来ないし、そのバイト先で2~3時間で気楽に作った憶えがあります。1曲作るのにすごく時間がかかる僕にしては珍しいパターンです。 今聴くと、自分の奥にある価値観が、こんなに昔から変わっていないことに驚きます。

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Credit Editer
- HIROTAKA MORI

Date MARCH 10, 2015