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アーチストと同じベクトルを向けたときはローファイでもいい音になりますね。(山本優)

第一回ハイレゾインタビューを飾るのは、レコーディングエンジニア山本優。
smap、青山テルマ、zone、長瀬美夕等のレコーディングに参加し数々のヒット作に携わる彼に、"ハイレゾ"、"いい音"、"これからの音楽"など様々なテーマで聞いてみた。

――まずは、エンジニアとはどんなお仕事ですか?

「主にCDなどを作る為にスタジオで楽器や歌を録音したり、トラックダウンという色んな音をまとめる作業をアーチストやプロデューサーの方と一緒に作業しています。」

――エンジニアになったきっかけは?

「昔バンドをやっていた時に録音してみたら楽しくて。ひょっとしたら自分に合っているのではと思いこの世界に入りました。ホントは絵描きになりたかったんですよ(笑)」

――エンジニアになって良かった事は?

「やはり色んなタイプの曲を、才能のあるアーチストの方たちと作る事ができることは、何よりも楽しいですね。」

――ハイレゾって言葉自体は知ってましたか?

「もちろん。実は10年くらい前からそんな概念はありました。当時pro toolsもなかった頃からクラシックの曲などは実験的に高音質で取り組まれていました。ジェネックスというレコーディングシステムを使ったり、1インチ(通常の倍の太さ)のアナログテープを使ったりしてレコーディングしていましたよ。最終的には当時出たてのSACDなどで発売していましたね。」

――当時はどんなジャンルが多かったんですか?

「2ミックスで録音していたクラシック、ジャズ系が主流で多かったです。ポップスはほとんどなかったですね。」

――ロックやポップスはどうやってレコーディングされていたのですか?

「当時はPCM-3348(Sony)のレコーダーが主流でした。デジタルレコーディングの主軸したが、48のテープヘッド変えるだけで、現在のprotoolsシステムを変えるくらい高かった。(笑)」

――音はどうでした?

「かなり良かった気がします。音がつぶれていない印象もあります。あとprotoolsと比べるとundoができないのでスタジオに緊張感ありました。いまでこそ笑い話ですが消したら土下座もの(笑)。パフォーマンスする側もレコーディングする側も失敗できない感覚はありましたね。今思えば懐かしいです。アシスタントエンジニアはレコーディングにとって非常に重要だった。録音はもちろんのこと、次の段取りを読んでマイクを立てたり、同時にいろんな事をやらなければいけない。やはり昔の方が鍛えられていたんでしょうね。」

山本氏から最近レコーディングしたピアノ音源の32bit/192kと16bit/44.1kの音源を持って来てもらい検証。

――なるほど、、だいぶ違いますね。

「ピアノはSteingwayで、マイクは8本立てました。192kだとレコーディングした時に近いリバーブ感、奥行き、ペダルの音までイメージしやすいですね。あと、プレイヤーは鼻をすすると大変なことになると言ってました(笑)。」

――最近ハイレゾ音源とかも買われました?

「My Bloody Valentineの"mbv"という音源を買いました。24bit/96kで販売しているものと、CDとアナログ盤のセットがあったので。この音源はアーチストのHPから直接買えて、"No Mastering"となっています。「nothing is」「wonder 2」という曲など良かったですね。Donald Fagen"Nightfly"なども、今度ぜひ聞いてみたいハイレゾ音源ですね。」

――山本さんの思ういい音とはどんな音ですか?

「やはり、どんなに高音質でも自分のエゴになってしまっている作品はダメで、作り手とのベクトルが一緒になった時に初めていい音になっていくと思います。たとえそれがローファイな音でも。」

――ちなみに、家でも音楽を聴いたりします?

「はい。自宅にあるモニタースピーカーを使って普通に聞いています。victor woodconeやYAMAHA NS-10M Studioなど。特にオーディオ用のスピーカーは使っていませんね。あと、みんな普段どんな音で聴いているか知りたくて、あえてappleの純正イヤホンで聴いたりもしていますね。」

――簡単にいい音で聞くコツとかってあります?

「iTunesに通すと独特の個性がでるので、Quicktime player(mac)を立ち上げて聞いていますね。あと、ヘッドホンにこだわるといいのでは。僕は、victorのHA-MX10-Bというヘッドホンを仕事でも使っていますが、オススメです。」

今回は山本氏が愛用している「いい音」になるレコーディング機材を持参してもらった。

The MANLEY VARIABLE MUR LIMITER COMPRESSOR
The MANLEY VARIABLE MUR LIMITER COMPRESSOR

――この機材はどんな音がするのですか。

「基本的にはマスタリングのように最後の2ミックスに使っています。Fairchild670のような独特な滑らかなコンプ感があり、数えきれないほどのヒット曲がこの機材を通して生まれていると思います。」

――ヴィンテージ機材なのですか?

「基本的にはもう廃版だそうで、急いで買いました(笑)。いまや入手困難ですね。ぜひ今度試しましょう。」

――最後に、今後の音楽シーンはどうあるべきだと思います?

「いまやネットを通して色んな音楽が聴けるようになりましたが、人が本当に欲しくなり、ずっと持っておきたいと思えるような音楽を作っていく事がとても重要ではないかと思います。」

――今日はどうもありがとうございました。

「こちらこそ。」

Credit Editer
-Taichi Nakamura

Date April 25, 2013